SIerとは?わかりやすく簡単に解説|SI歴14年の管理職から就活生へ
SIerについて調べる人
「システム開発ってどういう仕事なの?
どんな人が向いてる?キツイ仕事?」
こういった疑問に答えます。
簡単な自己紹介
こんにちは。
私は大学を出てから、SIerでずっと働います。今は管理職で、年収でいうと1,000万円に届きました。
今でこそ安定して仕事をしていますが、SIerの事をよく知らないまま就職してしまって、しばらくミスマッチを感じて苦しみましたし、そうして辞めていった同期や後輩をたくさん見てきました。(もちろんそうでない人もたくさんいます)
きっと同じように、就職してから「思ってた仕事と違う」と苦しむ若い人がたくさんいるだろうと思い、私の知識・経験が少し役に立てばいいなと考えて、SIerとは何か?というこの解説記事を書くことにしました。
と言うのは、今はネットで情報が取れるけど、残念なことに嘘や質の悪い情報も多いなと思ったからです。例えば、SIerで働くのにプログラミングスクールに通う必要なんてないです。
わかりやすく仕事の本質を書くようにしますので、3分ほどお付き合いいただけると嬉しいですm(_ _)m
SIerとは?わかりやすく現役エンジニアが解説します
それでは、SIerとは何か/どんな仕事をしているのか解説していきます。簡単に言うと、SIerはシステムを作る仕事です。
お客さん(顧客企業)
「今度、うちの取引サービスを刷新したいと思っているよ。
今のシステムはだいぶ古くなっちゃったからね。
よろしくお願いしますね。」
SIer社員
「では、うちでこんな感じに作りますけどどうでしょう。
三ヶ月でやりますね。
見積はこんな感じです。」
ざっくりイメージで言うと、こういう仕事です。
続いて、SIerが開発するシステムの例を挙げます。
[システム開発の例]
- 携帯電話の料金システム
- 銀行から銀行に送金するためのシステム
- 証券取引所で株の売買を行うためのシステム
日本で動いている大きなシステムは、ほとんどSIerが作ってます。
直感では、テクノロジーが進歩して社会問題が解決したりビジネスが進化するような気がしますが、実際はSIerが複数のテクノロジーを活用しつつ、問題解決をしています。
密なコミュニケーションで、皆の共感を得ることが大切です
システム開発は、仕事を進めていくうえで、関係者が多いです。
内容を正しく共有することで、スムーズに仕事が進んでいきます。
SIer社員
「取引サービスを刷新することになったので助けてください。
まずは今のシステムの調査からお願いします。
資料はこれです。」
協力会社さん
「やってみます。
わからないことは相談しますね。」
SIer社員
「取引サービスを刷新することになったので、
プログラム開発をお願いします。
資料を作りましたので、
この通りに開発をお願いできますか?」
オフショア(中国など海外現地)の方
「おまかせください。
資料を読んで、開発スケジュールをお伝えしますね。」
こんな感じで、関係者と認識の齟齬がないようにプロジェクトを進めていくのがポイント。外国人にもわかりやすい資料で情報を共有するのも重要になります。
SIerに入るとお付き合いすることになる関係者をざっくり紹介します。
[プロジェクトの関係者]
- 顧客(システムを使いたい人)
- 協力会社(システム作りを手伝ってくれる人)
- オフショア(システム作りを手伝ってくれる海外の工場)
- ベンダー(システムの材料を提供してくれる人)
SIerの仕事を進めていくには、たくさんの関係者と協力していく必要があるため、人間関係が命です。とはいえ上司がしっかり握ってくれてるはずなので、安心して開発の仕事をしていって大丈夫です。
システム開発のレシピ
システム開発の主な材料を4つ挙げます。ほとんどのシステムは、この4つの材料で作れるかと。
- 仮想サーバ・・・システムが処理を行うためのコンピュータ
- ストレージ・・・処理するデータの置き場
- ネットワーク・・・インターネットとか、サーバ間や社外を専用線で繋ぐ
- プログラム・・・処理する方法が書かれた手順
プログラム以外の3つのものはメーカーなどから調達します。
プログラムは作るシステムごとに異なるので、パッケージと呼ばれる汎用の製品を調達してカスタマイズしたり、自社で設計し開発します。
SIerに対するよくある懸念や誤解など
プログラマーが働いてる会社のことですか?
システムを作るためにプログラムを開発しますが、プログラミングをするのは主に、海外の委託会社さんになります。そのため、会社内にプログラマーはいません。
» 参考:【低い】プログラマーの年収は200万円以下です【IT業界の残酷な成功法則】
SIerはブラックだと聞きました
仕事は多いですが、短期集中で働く意識が高い業界です。どの会社も終電まで残ったり、徹夜するような仕事の仕方ではないはずです。ただ10年前はどの業界も残業が多かったので当時の事を言う人がいます。また、今でも夜中にシステムトラブルが起きて対応することがあります。
» 参考:「SIerはやばい」と語るひろゆきの主張は完全に間違っている
具体的な平均年収、残業時間、離職率が気になる
以下の通りです。
- 大手SIerの平均年収は755万円(平均年齢40.7歳)
- 平均残業時間は32.7時間/月
- 離職率は9.6%
» SIerの平均年収と残業時間を解説【良い環境で働きたい】
» SIerの離職率は9.6%だけど無視していい話【他人の話でしかない】
SIerは技術力がないので成長できないと聞きました
プログラマーのように手を動かさないので、手に職はつきません。身につくのは、テクノロジーの概要を理解して以前の製品との違いなどポイントを捉える理解力です。またシステム開発は外注して100人とか大きなチームで行いますので、非常に高度なチーム力やプロジェクト管理能力が身につきます。
» 参考:SIer不要論|IT業界でSIerはオワコン?【技術力なし】
» 参考:SIerは成長できない|その真偽をSI歴14年のエンジニアが解説
SIerは古くて新しいビジネス
SIerはコンピュータがビジネスに使われだした1960年代頃からあります。ですから日本のIT業界の中では、最も古い業態なんです。
代表的なSIer
企業 | 設立年 | 社員数 | |
日立製作所 | 1920年 (大正9年) |
34,925名 | |
日本ユニシス | 1958年 (昭和33年) |
4,190名 | |
野村総合研究所(NRI) | 1965年 (昭和40年) |
6,130名 | |
新日鉄住金ソリューションズ | 1980年 (昭和55年) |
3,031名 | |
NTTデータ | 1988年 (昭和63年) |
11,263名 | |
一度作ったシステムも、数年に一度は作り直します。例えるとスマホを機種変するのと同じ感じでして、古くなると新しい技術が使えなかったり、サポートが切れて不都合が生じるので、作り直して新しくします。
だからビジネスモデルが古いとは言っても、新しい技術は常に取り入れているんです。
新しいビジネス:WEB系企業との違いについて
GoogleやAmazonなどのWEB系企業は1990年代後半にインターネットが家庭に普及した頃から急成長し続けていて、SIerとWEB系ではビジネスモデルも企業文化も水と油くらい違います。
そのため、ネットではよくSIerがWEB系企業と比較されて、古臭いとかオワコンと言われていますが、長い目で見れば、水と油は確実に混じり合う関係にあります。
両者の違いを一言でいうと、会社の「目線」の違いが挙げられます。
WEB系企業はスマホやPCから消費者が直接使うシステムを作っていて、徹底して消費者目線。SIerは主に企業や官庁の中の業務で使われるシステムを作っていて、消費者が使うことは少ないです。ですから社会インフラとして機能するシステムなので、社会に目線が向いています。
消費者目線の方が個人にとってはわかりやすいので、世の中ではSIerよりもWEB系企業の方が人気が高いというのもあります。これは、大手建設業や海運業よりもグリコやカルビーのような食品メーカーの方が私達にとって馴染みが深いのと同じような関係と言えます。
また、最近はオンラインバンキングなどSIerが消費者向けのアプリを作る機会も増えてますので、SIerは徐々に消費者目線も獲得しつつあります。
勘違い:WEB系≠GAFAです
「社会目線」「消費者目線」の両方を持っているのがいいのでしょうけど、そういうハイレベルな企業はGoogleなど特別なごく一部の企業だけです。
つまり、WEB系はGAFAから今日できたばかりのスタートアップに至るまで多種多様なので、十把一絡げにWEB系とくくって考えない方が良いかと。
代表的なWEB系企業
企業 | 設立年 | 社員数 | |
Amazonジャパン | 2000年 (平成12年) |
非公開 (グループで約61万人) |
|
google合同会社 | 1998年 (平成10年) |
1,300名 | |
楽天 | 1997年 (平成9年) |
5,831名 | |
Yahoo!JAPAN | 1996年 (平成8年) |
6,611名 | |
サイバーエージェント | 1998年 (平成10年) |
1,540名 | |
メルカリ | 2013年 (平成25年) |
1,178名 | |
IT業界におけるSIerの立ち位置
SIのほか、パッケージソフトの販売やアウトソーシングなどの関連事業は総称として情報サービス産業
と呼ばれています。SIerは、この情報サービス産業の中心的存在です。
IT業界におけるSIerの立ち位置(イメージ)
IT業界におけるSIerの立ち位置と個別企業について以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
IT業界地図とSIerマップを解説【業界研究にお役立て下さい】
IT業界はとても広く、様々な企業が存在します。またIT業界の中でもSI業界は日本のIT業界の中心と言えます。本記事ではIT業界を理解するための業界地図(大きな地図)とSIer業界を理解するための業界地図(小さな地図)を紹介します。将来これらの業界への就職・転職を志望している方の業界研究にお役立ていただければと思い記事にしました。
SIerの将来性
SIerの将来性を見極めるためには、前述の「顧客企業の要望するシステムの構築・運用」と言うニーズが今後も継続するのか?というのがポイントです。結論からいうと、継続します。
確かにGAFA(Google,Apple,Facebook,Amazon)のうち3社はWEB系ですから、googleをはじめとするWEB系企業の方がSIerとは比較にならない程伸び代が大きいというのが近年における歴史的な事実です。
しかしGAFAに就職するのならば良いのですが、中小のWEB系企業はGAFAに飲み込まれ続けており、GAFAのサービスが拡充するたび、周辺事業を行なっているWEB系企業は経営が成り立たなくなってしまいます。
一方で、私の務める会社(SIer)では毎年開発規模が過去最高を更新しています。もちろん今後、短期的には銀行などの大規模システムの構築案件が落ち着いて需要も減る局面はあると思います。
しかし、システム構築の需要は時代とともに変化しながら継続するため、かつて数十年に渡って変化し続けてきた大手を中心としたSIerは環境の変化にはとても強く、十分な将来性があります。
SIerを中心としたIT業界の将来性については、以下の記事をご覧ください。
【ピラミッド構造】 IT業界でSIerはオワコン?【技術力なし】
「IT業界ではSIerはもう終わりって聞いたけど、将来性がないの?古臭くて、IT業界なのに技術力もないとか。ピラミッド構造とか何だかんだ怖い感じがするし、ヤバイ業界?」→こんな誤解に答えます。1.SIerはなぜオワコンと言われている?/2.実はSIerは将来性が高い3つの理由
IT業界10年後の動向について
IT業界の動向について知りたい人「IT業界は働くうえで魅力的ですが、変化の激しい業界です。10年後は仕事がなくなっちゃうのではないかと不安です。将来性が高いのはどのような技術や会社ですか?」→こんな悩みに答えます/1.10年後の世界で今と変わるもの、変わらないもの/2.IT業界の10年後の動向/3.IT業界で働くならこんな仕事がオススメ
SIerの職種と仕事内容
SIerでは開発やシステム保守の仕事を行なっています。SIerに就職すると、以下のような職種に就くことになります。
- 1.アプリケーションエンジニア
- 2.インフラエンジニア
- 3.運用・保守エンジニア
- 4.テクニカルスペシャリスト
それぞれの詳しい仕事内容については、以下の記事をご覧ください。
SIerの仕事内容について解説します
【付加価値の高いものを中心に】
SIerについて調べる人「SIerの社員ってどんな仕事をしているんでしょうか。将来を見据えて、どんなスキルを磨いたらいいのかな?」→こんな疑問に答えます。SIer社内での職種を紹介します。
SIerとはどのような事業のことか解説しました
今回は以上です。SIerは日本企業の基幹業務を支えるシステムを作っているため、WEB系企業(GAFAを除く)に比べて事業規模が大きく、安定成長するという特徴があります。業界地図や将来性など、関連記事もお読みいただけると幸いです。