未経験からシンクタンク転職するときの完全ロードマップ
こんにちは。業界研究のお手伝いをします。
シンクタンクって、賢い響きがしますね。
人材がシンクタンクの商品ですからね。ただし、誤解も多くあると感じています。
今回はシンクタンクの実態について解説します。
本記事の内容
- 【実態】日本のシンクタンク≒大規模システムの構築会社です
- 【シンクタンク】転職・就職の志望動機は?
- シンクタンクの仕事内容
- シンクタンクの労働環境
- シンクタンクの将来性
- シンクタンク社員評価ランキング
【実態】日本のシンクタンク ≒ 大規模システムの構築会社です
米国のシンクタンクとは全く違います
シンクタンク(英語: think tank)は、諸分野に関する政策立案・政策提言を主たる業務とする研究機関。
直訳すると、頭脳集団。よって、頭脳集団という意味での民間企業も多くある。
日本のシンクタンクは、「政策立案」や「政策提言」はほとんどしていません。また、研究機関でもありません。
実態はシンプルに、大規模なシステムを作っている会社と思ってよいです。例を挙げます。
[どこも大規模システムの開発・保守の売上が大部分を占める]
- 野村総合研究所 ※コンサルティングが1割で、残りはほぼシステム開発です。日本のIT業界ではトップレベル。
- 三菱総合研究所 ※日本トップレベルのシンクタンクとして有名ですが、システム開発が売上の6割を占めています。
- 大和総研 ※コンサルティングやリサーチ業務もしていますが、システム開発売上の割合がほとんどを占めます。
- 日本総研 ※大和総研と同様です
- みずほ情報総研 ※コンサルティング業務を一部行っていますが、システム開発売上の割合がほとんどを占めます。
研究機関としての本来のシンクタンクも少しあるので紹介します。IT業界志望の方は無視してOKです。
[IT業界志望なら対象外]
- 富士通総研 ※純粋な意味でのシンクタンク機能を有し、システム開発業務は行っていない
- キャノングローバル戦略研究所 ※純粋な意味でのシンクタンク機能を有し、システム開発業務は行っていない
その他のシンクタンクです。IT業界志望の方はこちらも無視してOKです。
[IT業界志望なら対象外]
- みずほ総合研究所 ※コンサル、リサーチを行っており、システム開発業務はなし。みずほ情報総研と2021年統合する予定
- 船井総研 ※中小企業向けにアドバイスを行う専門コンサルタント会社。システム開発業務を行う会社ではない
日本では、本業ではないけれど非常に付加価値の高い業務をまとめて別会社に切り出して、「シンクタンク」や「XX総研」ということにしている感じですね。
こうした流れは、監督官庁である金融庁に説明したり、質の高い人材を集めるための工夫と考えて良いと思います。
【シンクタンク】転職・就職の志望動機は?
シンクタンクに就職しても、調査研究やコンサルティングの仕事は少ないです。
主戦場は大規模システムの開発になりますので、「シンクタンク」という言葉に惑わされないほうが幸せです。
さらに、本業が「大規模システム」と理解しておけば、面接でもフワッとではなく、きちんと業務の本質を理解しているなという印象を与えることができます。
シンクタンクの仕事内容
シンクタンクでIT系の仕事をする場合、大きく以下の3つです。
仕事の本質はしっかり頭を使って考えたことを文書にして、関係者で合意することです。具体的な仕事内容はあまり重要ではないので、以下はさらっと目を通せばOKです。
- 基幹系システム担当
- WEB系システム担当
- インフラ担当
基幹系システム担当
銀行や証券のシステム本体を担当します。例えばこんなシステムですね。
- 明日の朝、どの預金者にいくら利子をつけるか
- 為替や株価の変動によって、お客さんに貸し付けられる上限額を再計算する
JavaやGo言語のような今時の言語は使われず、CobolやPL/I、アセンブラといった言語が使われている、メインフレームの独特の世界です。
システムの設計はしますけど、プログラミングするようなお仕事ではないので、言語とかはあまり気にしなくて良いです。
WEB系システム担当
お客さんがスマホやパソコンでアクセスできるオンラインバンクや、オンライントレードなどの担当者です。
年々規模が拡大していて、AIやビックデータ、IoTとも密接です。目に見える仕事なので基幹系システムよりも理解しやすいと思います。
インフラ担当
基幹系システムやWEB系システムを動かす仕組みを作ったり維持したりします。ネットワークとかサーバとかミドルウェアですね。
仕事内容はSIerに近いですが、最上流工程+管理のイメージですね、他はなるべく協力会社さんや海外を使いつつ、うまく行かないところをフォローする感じ。
シンクタンクの労働環境
シンクタンクの労働環境について、特徴を挙げて解説します。
- 仕事の付加価値が高い
- 平均年収は高め
- 年功序列
- 法令遵守
仕事の付加価値が高い
シンクタンクが担当する大規模システムは、主に金融機関向けです。ざっくりいうとこういうイメージです。
- 大規模なシステム → 付加価値が高い
- 金融機関のシステム → 付加価値が高い
シンクタンクのお仕事は、2つの意味で付加価値が高いです。
そして、付加価値が高い仕事をすることで「スキルが高まる」「年収が上がる」「転職に有利」と3つのメリットが得られます。ただし、面白いと感じるかどうかは別の話ですよ。
平均年収は高め
付加価値の高い仕事ですから、社員の年収は高めです。
IT業界の会社員の平均年収は約600万円なのに対して、シンクタンクではそれよりも約200万円〜600万円くらい高い水準です。
ただ、銀行員や証券マン、IT系コンサルティングファームと比較すると、これよりも低い水準になります。
年功序列です
IT系コンサルティングファームとの大きな違いは、日本的な企業文化が強くて、年功序列であること。
また、体調を崩してしまった場合などの福利厚生も充実しているので、弱肉強食のコンサルティングファームよりも安心感の大きい職場と言えます。
法令遵守意識がしっかりしている
法令遵守意識が非常に高いため、サービス残業などはどこも無いはず。労働時間も残業規制によって厳しく管理されます。
ただし、大規模システムはプロジェクトが火の車となることも少なくありません。
そういう時は、若い人や権限の大きくない人から順番に守られますのでしばらくは大丈夫ですが・・・
課長・部長クラスに出世すると、炎上したときにプロジェクトの火消しと部下の労務管理に挟まれて苦労することも。出世するほど給料は良くなる分、どこも大変ですね。
シンクタンクの将来性
一般的にシンクタンクは将来性が高いです。もちろん、会社にもよりますけど。
特に業界トップレベルの野村総合研究所は快進撃が止まりません。毎年、売上・利益ともに過去最高を更新し続けています。
他のシンクタンクの懸念点は、親会社の業績ですね。野村総合研究所以外のシンクタンクは、売上の大部分を親会社である銀行・証券会社からの開発案件に頼っています。
このご時世、IT投資をケチることはないですが、例えば親会社が赤字になってしまえば、子会社であるシンクタンクもボーナスが出ない、なんてこともあり得ます。
他には、中長期で考えた場合のリスクとして業界再編の影響を受ける可能性があります。金融機関の合併ですね。
例えばネット銀行やネット証券と合併することになった場合、システムやシンクタンク自体も一緒に再編されることになるでしょうね。
シンクタンク社員評価ランキング
最後にシンクタンク各社を定量的に評価しておきます。
システム開発に強みのあるシンクタンク5社の社員・元社員による投票結果をもとに、ランキングを作成しました。
出典はOpenWorkさんの総合評価データ(最高が5.00、最低が1.00)です。
- 1位:野村総合研究所 4.16
- 2位:三菱総合研究所 3.66
- 3位:日本総合研究所 3.45
- 4位:大和総研 3.20
- 5位:みずほ情報総研 3.17
シンクタンクの競合企業と比較
参考のため競合する企業(コンサルティングファーム,金融機関,SIer)の評価を例に挙げると、アクセンチュア(4.17)、アビーム(4.09)、三菱東京UFJ銀行(3.34)、富士通(3.13)、CTC(3.47)、フューチャー(4.02)といったところですね。
シンクタンクは他よりも良い!とか悪い!と主張するつもりはないので、数字をもとに違いや特徴を企業研究していただければと。優先度をつけることも大切ですしね。
それでは、今回は以上です。