「SIerはやばい」と語るひろゆきの主張は完全に間違っている
ひろゆきさんがSIerの将来性についてやばいと語るインタビュー記事を見ました。
個人プレイに強いひろゆきさんに、チームワークが命のSIerを語ってもらってるせいか全く本質を捉えていなくて、やばい内容になっている・・・
本記事では、SIer歴15年の筆者が、インタビュー記事について訂正と反論をしてみます。
ポケモンはシューティングゲームではありません【誤解】
ひろゆき:
SIerにいるエンジニアは、工夫する機会にも恵まれないですよね。自社サービスだと「こう書いた方がリソースコストが下がる」とか、「こっちの方がユーザーさんが喜ぶんじゃないか」とか、いろいろ考えてものを作るじゃないですか。世に出した結果うまくいかなかったら、どうすればうまくいくかを自然と考える。でも、SIerにはそのインセンティブがありません。仕様書通り作らなくちゃいけないし、すごく優秀なアルゴリズムを組んだところで評価もされない。だから、工夫できなくなるんです。
この問題の本質は、実は大して喜ばれないことを喜ばれると思ってる(=ミスマッチ)ことです。
SIerではビックプロジェクトで100人とか1,000人単位の人が動くので、その中の優秀なプログラマーが担当した作った1%の部品(ソースコード)の美しさよりも、100人の製造した部品全体の品質の方がユーザはずっと気になるんです。
ポテチとかポップコーンでも同じですよね、メーカーの人は製造現場に、めっちゃ美味しい”アタリの袋“がレアで入ってる!とか期待してなくて、異物混入しないようにとか、全体の品質が均一で問題が無いか気を遣いますよね。ポテチなら当たり前にわかることが、ITだと正しく認識できなくなってしまうのは何故なんでしょう。
開発現場で求められる工夫は”横展開”一択です
ですから、自分の担当の範囲だけ良くするという考えは改めた方がいいです。全体を良くするような提案をすることでちゃんと評価されますから。
具体的に言うと、みんなが効率の悪い作業をしているなら良い手順書を作って皆の作業をやりやすくするとか、読みにくいコードを書く余地があるならコーディングルールを決めるとか、自分だけでなく全体がよくなるような横展開を提案するのが最善手なんです。
人よりも優れた仕事や新しいことをしてもほとんど評価されない。でも、チームでそれを利用するよう工夫するとすごく評価される・・・。
開発現場にはそんなケースがとても多いんです。みんなが幸せにならない方向にだけがんばっちゃうと、非常にもったいないなと。
それって、「会社」というゲームのルールを理解してから仕事するっていう話ですから。ポケモンはシューティングゲームじゃなくRPGってのと同じです。ぜんぜん難しく考える必要ないです。
SIerで一発当てる方法【2つある】
ひろゆき:
自社でものを作っている会社にはまれに「当たる」ということがある。すると「社員にもボーナス出すわ」ってことにもなりますよね。でも、他社の仕事を請け負っているだけのSIerは、受注する仕事を増やして会社の規模が大きくなることはあるかもしれないけど、一件あたりの利益の幅が上がることは基本的にはない。だからひたすらに疲弊していくということです。
SIerでも当たりはあります。事例を2つ挙げますね。
SIerで当てる方法①「社内ベンチャー」
SIerは皆同じ仕事をやっているように見えて、医者の「内科」「外科」「小児科」のように専門領域が別れています。
最近だと「金融 x AI
」とか「製造業 x VR
」といった新領域が芽を出しています。
こうした新しい領域でマーケットシェアを取れれば当たりです。他に競合がいないので、単価が高くても仕事が受注できるわけですね。
例えば、野村総合研究所は1995年に、当時の新領域だった「システムセキュリティ
」で社内ベンチャーを立ち上げ、今では日本一社員の年収の高いセキュリティ子会社になりました。
SIerで当てる方法②「効率化」
地味ですが、効率化すると大きく当てることができますよ。
10年くらい前の話ですが、ぼくは当時1ヶ月で100万円かかる開発業務を中国に持っていきました。すると1月25万円くらいでできる。品質の悪い分は国内でチェックが必要ですが、それでも製造原価を約半分にできた。売値は変えなかったので、会社は大儲けです。
今だと中国からさらに安い東南アジアに持っていっている。そのうち製造は、アフリカに持っていくんじゃないかなと思います。
SIerだと大きなプロジェクトでは月に100人とか200人とか動員しますから。コーディング環境などのちょっとした改善でも、工夫すれば大きな効果が出るんです。
システム開発の本質はコストではなく人
ひろゆき:
はっきり言って、SIerで働いているエンジニアは今すぐ逃げた方がいい。
他社にものを納品するビジネスモデルの会社は、同じような企業がたくさんある中での競争になるから、その競争に勝つためにはどうしたってコストを削減せざるを得ない。コストを削減すれば、当然給料も安くなる。それをしなければ競争に負けて潰れるだけ。
結論から言うと、逃げる必要はないし、給料が安くなることもないですよ。
根拠を挙げると、SIerはコンピュータが使われだした1960年前後からあるビジネスモデルなんですが、給料水準はずっと上がり続けています。
競争のない内販、競争のある外販
SIerには外販と内販の2つの部門があります。外販はひろゆきさんが言う競争のある世界、内販はグループ会社向けの仕事なので他のSIerとのコンペは無く、競争の無い世界です。
内販部門では親会社のシステム担当役員と当年度のシステム開発計画をトップレベルで握りますので、売上・仕事量ともに1年を通じて安定していまして、そういう不安を感じたことは入社以来1度もありません。
コスト競争よりも品質競争
外販部門もふつう、身を切るようなコスト競争にはなりません。IT人材はいつも不足している上に、お金持ち企業はシステムを安く作ることよりも、安全安心で使いやすいシステムを期限通りに導入したいという思いの方が強い。つまりコスト競争よりも品質競争が第一です。
顧客企業は信頼できるリーダーにお願いして、安心してプロジェクトを進めたいと常に考えるので、SIerの外販部門では部長〜役員レベルの人材の信頼性や営業力が勝負になってきて、コストは二の次です。ですから部長より下のSIer社員は安心して働いていい。
お金より人材が大切
SIerというのは、トップから末端まで人ありきのビジネスなんです。顧客サイドもお金の問題ならプロジェクトを期またぎにして2年に分けて予算を捻出するとか、規模を縮小してコアなシステムの開発に集中するとか金策が打てるのですが、経験豊富で人間力のあるリーダーのもとで、信頼できる開発チームを作る、維持するというのは容易なことではないですから。システム開発の本質は金じゃなく人にあります。
ですから、逃げるなんてネガティブな転職を考えるより、目の前のプロジェクトで結果を出すべきなんです。結果を出せば、それを手土産にいい転職もできます。これならポジティブな転職ですから、転職先は引く手あまたです。この業界で成果を出した人は、転職で年収が2倍になることもあるんですよ。
結論:ひろゆきさんはSIerじゃなくSESを語っていると思う
この記事で、ひろゆきさんはSIerではなくて、SESで働くコーダーについて語っていると思います。
確かにSESはコーディングがメインの業務としてありますし、コスト競争にもなります。SESでコーダーとして働き続けたいなら、やばいでしょうね。
SIerではコーディングは若手のトレーニング程度しかなく、ビジネスの構造上コスト競争も現場はほとんど無視して良いです。
SESの仕事の多くが海外の安い地域のエンジニアに置き換わっていってますし、確かにSESでコーダーとして働くなら、WEB系のコーダーの方がまだおすすめできますね。
今回は以上です。参考になりましたら幸いです。
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